【不動産絡みの相続問題/遺産分割】兄弟姉妹で土地の分割割合で争われた事案。調停・訴訟を経て、和解が成立。

相談前

独り身の女性(高齢者)がお亡くなりになり、甥や姪ら兄弟4名が相続人となった事案でした。兄弟の内1名が亡くなった女性と同居し日常の面倒をみていたことから、「俺は面倒を見てきたんだし、多くをもらう権利がある!」等と述べ、お亡くなりになった女性の遺産の不動産を多く欲しいと要求。これに対し、他の兄弟が、「兄さん平等に分けよう!」と反発。話合いも埒があかなくなり、当職に相談にきました。 女性は、他にも多額の預金を残しておりましたが、この分け方でも話はまとまりませんでした。 なお、この事案では、亡くなった女性には異母兄弟(既に死亡)がおり、その異母兄弟の子ら3名も法定相続人でしたが、長男はこれら3名に働きかけ、長男に相続分を譲渡させる書面を作成していました。そこで、兄弟4名の相続割合でも揉めていた事案です。

相談後

話合いでは埒があかないので、すぐに調停を申立てました。それと同時に、預金の払戻しを急ぐため、各銀行に対し、相続分に応じた預金の返還請求訴訟を提起しました。これにより預金は早期に手にすることができたのですが、調停では、各相続人の相続割合で話合いがまとまらなかったことから、地方裁判所に「各相続人の相続割合の確定」をしてもらうための訴訟提起をしました。これにより、兄弟4名の相続割合は当方の主張が通り、再度調停で不動産をどのように分けるかについて話合いをしました。長男は亡くなった女性の面倒をみていたとして寄与分を主張したり、土地の評価を巡って調停には時間がかかりましたが、土地を売却し、ほぼ法定相続分の通りで売却代金を分配するという合意が成立し、無事に解決をしました。

弁護士からのコメント

(1)兄弟間の争い この事案もそうであるように、相続事件では兄弟間で争われることが非常に多いです。それは、遺産が多く欲しいという言い分ではなく、誰かが多く欲しいと言うのに対し、それは平等ではない‥などというきっかけから始まることが多いです。兄弟が多い場合には、2つのグループに分かれ紛争が繰り広げられることもあります。いったん紛争になってしまうと、その後は法事があっても目も合わせないといった関係にまでなってしまいます。 遺産分割の話合いの段階で、少し譲歩をするというのも長い目で見たら良い解決となることもあります。ただ、本事案では、譲歩をすることができず、調停や訴訟で争うこととなりました。 (2)早期の預金の回収 遺産である預金については、2016年12月19日に最高裁判例が出るまでは、各銀行に対し訴訟提起をする方法で法定相続分に応じた払い戻しを受けることができていたため、相続税の申告などで現金が必要であったこともあり、早々に訴訟提起をし預金の回収を図りました。これにより、依頼者は相続税の納付期限に納税をすることができました。  (3)相続割合 相続分に争いがある場合、その確定地方裁判所でしなくてはなりません。本件は、長男が、別の相続人らから相続分の譲渡を受けたなどとして、多くの相続割合が認められると主張していましたが、当職が別の相続人から聞き取り調査をした結果を裁判所に提出したところ、裁判所は、当方の主張どおり、長男にだけの相続分の譲渡ではなく、長男ら4名の相続割合は平等であるという判決を下しました。 この判決が確定したことで、あとは調停で不動産の評価や寄与分の話を詰めるだけとなりました。 (4)調停での話合い 調停においては、長男が「こんなに貢献してきたのだから、同居期間1日当たり1万円の寄与分が認められる」などと主張していましたが、寄与分を基礎付ける客観的な証拠がないという反論をしたところ、若干の寄与分のみ認められることで合意をしました。そして、不動産については、これを相続人の内誰か一人が取得し、現金で清算をするということができれば良かったのですが、現金を出せる人がおらず、結局売却の上売却代金を各相続人の相続分に応じて分配するとの話合いで解決しました。 不動産の相続は良く争われるといいますが、その原因は分けることが簡単ではないからです。本件も解決に4年近くかかりましたが、お亡くなりになる前に遺言を書いて、遺産の分け方について思いを残していれば、ここまでの争いにはならなかったかも知れません。親族が無用な争いをすることがないよう、遺言の作成というのは良い相続対策となるでしょう。

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